くい打ち機転倒「思い出の家」一瞬で

八千代市村上の木造2階建て住宅に15日朝、高さ23メートルのくい打ち機(60トン)が倒れ、住宅1階の一部までめり込んだ。一人暮らしの無職太田しづ子さん(76)は直撃を免れてけがはなかったものの、「少し時間がずれていれば……」と、震えていたという。(長崎潤一郎、伊藤舞虹、佐藤英彬)

 八千代署の調べによると、くい打ち機は、太田さん宅と道路を挟んで向かいの病院敷地で、転倒した。地中のくいを抜く作業のため移動していたという。地面には鉄板が敷き詰められていたが、前夜の雷雨の影響でその下の土はぬかるんだ状態だったという。

 銚子地方気象台によると、千葉市で14日夜の1時間に36ミリ、船橋市でも4時間で20・5ミリの雨量を観測していた。

 現場では8月から解体作業が行われ、今月に入ってくい打ち機が使われていたという。

 東京電力千葉支社によると、この影響で電柱が折れ、約千軒が一時停電した。

 事故が起きたのは太田さんが1階の台所で朝食の片付けをしている最中だった。くい打ち機のアームが、激しい音を立てて1階の居間までめり込んできた。普段、太田さんが新聞を読んでいる部屋だという。「真後ろに倒れてきて声も出なかった」。太田さんは署員にこう語ったという。

 近所の女性は、玄関から逃げてきた太田さんを目撃した。「あと少し倒れる時間がずれていたら、死んでいたかもしれない」。そう言って震えていたという。

 この道路は近くの小学校の通学路で小中学生もよく通る。「通行人が巻き込まれなかったのは不幸中の幸いだけど、怖い」と近くの美容室の女性店長。近所の男性も「妻が仕事場に行くのに自転車で通る。家を出るのがもう少し早かったら……」と言った。

 現場には、太田さんの長女(53)も駆けつけた。「父と母の思い出がつまったこの家がこんな姿になってしまって悲しい。築25年になる家だが、母は本当に大切に、きれいに使ってきた。精神的なショックは大きい」と話した。

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