トヨタ:大規模リコール問題 「安全対策を最優先」 経営には影響大--副社長会見

 トヨタ自動車の佐々木真一副社長は2日、名古屋市内で記者会見し、米国などでの大規模リコール(無償の回収・修理)の経営への影響について「大きな影響が出るのではと心配している」と懸念を示した。一方で「豊田章男社長から『顧客第一』と言われ、費用を考えずに改善措置を進めている」と安全対策を最優先する姿勢を強調した。【大久保渉、米川直己】

 1月21日の米国でのリコール発表以来、トヨタ役員が国内で事情説明するのは初めて。

 ◇深刻な販売不振も
 「世界の顧客に心配をかけた」--。会見は謝罪で始まった。トヨタは1月21日にリコールを発表、26日にはカローラなど対象8車種の生産・販売の一時停止も決めたが、改善策発表は2月1日にずれ込んだ。この遅れが消費者の不安を拡大したとの指摘に、佐々木副社長は「顧客に注意喚起を一刻も早く行おうとした結果、リコールと改善策の発表に時間差が出た」と説明した。

 アクセルペダルの不具合によるリコールは米国、カナダ、欧州、中国などで約445万台。直接的な費用は「最大1000億円程度」(トヨタ幹部)とみられるが、「高品質」のブランドイメージが傷ついたことは深刻だ。

 米調査会社は、トヨタの1月の米新車販売は前年同月比2けた減と予想。佐々木副社長は「過去の大型リコールでは、発表後の最初の月に2割ぐらい販売が落ち、徐々に回復したが、これほど顧客に心配をかけたのは初めてで、大きな影響が出るのでは」と米国などでの販売低迷の長期化を懸念した。

 ◇適切な対応を強調
 アクセルペダルのトラブルでは、米国で07年にユーザーの苦情が寄せられていた。佐々木副社長は当時リコールを見送った理由を「今回のようにペダルが戻らなくなる内容ではなかった」と説明。ペダルがフロアマットに引っかかり事故の恐れがあるとした自主改修との関係も「全く別の問題」と語った。

 一部の米メディアが指摘するアクセルの電子制御装置の欠陥の可能性も否定した。

 ◇テスト不足認める
 一方、佐々木副社長は問題の米メーカー製アクセルペダルについて「(個別の部品としては)さまざまな湿度や温度条件で性能試験をしたが、(他の部品と組み合わせたアクセル全体の)システムとしてはテストが欠けていた」と、品質管理面で不十分な点があったことを認めた。日本で生産する車については「調査したが、構造の違うデンソー製部品を使っており、問題はない」と明言した。

 ◇「レバーに鉄板」修理30分
 トヨタによると、不具合はアクセルペダルの付け根にある「フリクションレバー」で見つかった。ペダルに抵抗を付け、どの程度踏み込んだか分かるようにする可動式の装置。

 調査の結果、ペダルと接触する同レバー上部が、使用に伴って擦り減り、そこにヒーターの熱が流れ込んで結露すると、ペダル部分とくっついてしまうことが分かった。最悪の場合、ペダルが踏み込んだ状態から戻らなくなる恐れがあることが判明したとしている。

 1日に発表した改善策では、レバーの裏側に薄い鉄板を挟んだ。その結果、レバー上部とペダルの接点にすき間が生じ、ペダル使用時の摩擦が軽減される。結露してもペダル部分とくっつかず、ペダルの戻りが確実になるという。米国トヨタ自動車販売はリコール対象のカローラやカムリなど8車種について、全米のディーラーなどを通じて修理を受け付ける。修理にかかる時間は30分程度。欧州や中国などでも同じ措置をとる。今後生産する対象車には、新たに設計し直したペダルを搭載するとしている。【宮崎泰宏】

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