もう一度食べたい:アイスキャンディー 昭和の夏、切なく遠く=津武欣也

「昔ながらのアイスキャンディー屋さん? 今もありますよ。そこなら探し物の酒粕(さけかす)アイスも売っています」。そう聞いたのは4年前の夏。松山での取材を終え、空港へ向かうタクシーの中だった。帰京後、電話取材で「門田商店」(愛媛県東温市)を探し当て、懐かしの酒粕アイスには出会えたが(06年8月16日掲載)、現地は訪ねていない。それ以降、夏を迎えるたびに思いが募った。「トン、トン」と鳴り響く冷凍モーターの振動音、アイスボックスを覆う真っ白な霜――。昭和30年代、どこの町にもあったアイスキャンディー屋さんへの郷愁である。あの昭和の風景に会いたい。

 松山空港から車で1時間。地元では「かどみせ」の愛称で呼ばれる門田商店はまさに街の角にあった。旧道に面してアイスキャンディー売り場、もう一方が文房具屋さん。アイス売り場の前に懐かしい木製の縁台があった。

 懐かしのアイス製造ボックスは? 「木箱の内側に鉄板を張って、アイス製造と冷凍庫に分かれていた昔のものは10年前ぐらいに壊れました。いまはステンレス製に」と門田和子さん(67)。冷凍方法も変わり、冷凍パイプに真っ白な霜が付着する光景はなかった。

 同商店のアイスキャンディー作りは昭和11(1936)年から。製法はほぼ当時のままで、鍋に水と砂糖、あずきや練乳などの原料を入れ、寒天などを加えて煮る。これを冷却殺菌機に入れて混ぜ合わせ、ステンレス製の型枠に流し込む。これに棒を一本一本差し込み、冷凍機に入れて固める。「時間は約30分。マイナス25度から27度に冷やします」
一度の作業でできるアイスは160本(型枠10個分)。ココア、甘酒(酒粕)、抹茶、あずき、ミルク、イチゴの6種類あり、値段は子どもに人気のイチゴが105円、他は120円。売れ筋は甘酒、あずき、ミルクの順で、暑い日は1日600本売れるという。

 働き手は門田さんとパートの主婦ら女性ばかり7人。パートの佐々木美沙子さん(62)は「以前は6~9月だったシーズンが温暖化のせいか4~10月に。アイスの売れる期間がグンと延びた」と話す。

 「かどみせ」アイスは、昔ながらにむきだしで売っていて、カチンカチンに硬い。取材中、買った女性が誤って落としたのを偶然、目にした。アイスはなんと、カンッと乾いた音をたて、コンクリートの道を滑ったのだ。割れてもいなければ、崩れてもいない。「歯が立たない」ほど凍っているのだ。

 「ビニール袋に10本入れて、新聞紙で包むだけで1時間は持ちます」。車で立ち寄るお客さんも、そのへんは心得ているらしく、みんな新聞紙に包んで持ち帰っていた。

 「主人と2人の家族労働だから続けられた。私一人ではとても無理。パートさんも通年で雇えないし……」と門田さん。

 梅雨明けの街角で、夏の陽光がユラユラと揺れている。その白い光のなかにたたずみ、かすかに聞こえるモーター音に耳を傾けた。セピア色の記憶に、鮮やかな色はついに重ねられなかった。「ああ、昭和はほんとに遠くなったのだ」。青い、切なさが広がった。(明治大学客員教授)

 ◇マクワウリに復活の動き

 7月初め、RKB毎日放送の朝の番組「中西一清 スタミナラジオ」で懐かしのマクワウリが話題となった=写真。昭和20~30年代、全国どこにでもあったウリ。それが後発のメロンに負け、いつしか目にしなくなった。だが、消えていたわけではない。本家本元の旧真桑村(現岐阜県本巣市)のマクワウリ研究会(福田浩之会長、15人)は今年も約0・5アールの畑に120本を植え、3500個ほどの収穫を予定している。ピークは8月初め。JAの直売所「おんさい(『いらっしゃい』を意味する方言)広場 真正」で販売する。

 隣県の滋賀県米原市山東地区でも平成に入って復活。金太郎マクワウリ生産組合(中川薫組合長、6人)を結成し約3万個を京都や近隣市場に出荷している。

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 ◆購入など問い合わせ

 ◇昔のアイス

 門田商店(愛媛県東温市横河原349の4 伊予鉄・横河原線で松山市駅から約30分。終点の横河原駅から徒歩3分。アイスは店頭販売のみ、地方発送はしていない)

 ◇マクワウリ

 JAぎふ「おんさい広場 真正(しんせい)」(電話058・323・6351、ファクス058・323・6350)。マクワウリは1個200~300円。郵便番号、住所、氏名、電話番号、購入個数を明記しファクスで。送料と代金引き換え手数料がかかる。販売は7月末から8月15日前後まで。

 ◇金太郎マクワウリ

 中川薫さん(電話ファクス兼用0749・55・3085)5キロ入り箱(10~12個入り)2600~3500円、送料別。郵便番号、住所、氏名、電話番号、希望箱数を明記しファクスで。販売は7月末から8月15日前後まで。

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