1月15日13時0分配信 毎日新聞
◇浮桟橋に使用--詳細な記録、市になく
中部国際空港との海上アクセスの発着点として伊勢市が発注、建設した同市下野町の「宇治山田港旅客ターミナル」の浮桟橋として使われている台船の製造年月日などの詳細な記録が市にないことが14日、分かった。老朽化の程度が不明のため、安全性について疑問視する専門家もいる。
台船(縦27メートル、横12メートル、幅2・5メートル)は、県内の建設業者が所有していた鉄製の中古品。上部に長さ6メートルの鉄板を張って浮桟橋に加工し、8本のアンカーチェーンでつなぎ留めている。潮の満ち干に応じて約2メートル上下できるようになっている。
県の県土整備部は「浮桟橋に中古の台船を使用するのは聞いたことがない」と話している。市交通政策課は「中古を使用することにしたのは経費節約のため」と説明、「詳しい記録がなく、台船がいつ造られたものか分からない。安全だと思うが、10年ごとに防さびを施す」と話している。
神奈川県の台船専門業者は耐用年数について「新品で10~50年が限度。中古品だとよく分からない」と話している。浮桟橋に詳しい造船業者は「安全だという根拠はなく、いつ沈んでもおかしくない」と指摘する。
ターミナルは6億5000万円を投じて建設された。このうち約4億3000万円が合併特例債で、浮桟橋工事には約1億4700万円が支払われた。
ターミナルは昨年4月の航路開設を目指し建設された。しかし、原油の高騰などを理由に運航会社「セラヴィ観光汽船」が撤退し、頓挫したままとなっている。【渡辺隆文】
〔三重版〕