7月28日13時1分配信 毎日新聞
◇気密性を高め結露防止 柏崎の「ウエキハウス」が開発
07年7月の中越沖地震の被災地・柏崎市では、地元の住宅建材メーカー「ウエキハウス」が開発した木造の仮設住宅が注目を集めた。断熱材を内側に張った木製パネルを使って組み立てたことで気密性を高め、室内の結露を防ぐことに成功した。「地元のために技術を役立てたかった」と話す植木忠史社長(58)に開発のいきさつや今後の展開などを聞いた。
地震災害などで使われる仮設住宅は、鉄骨プレハブ造りの建物が一般的だ。壁材には断熱材を間に挟んだ鉄板が使われるが、04年の中越地震では、湿度が高い気候の影響もあって、多くの被災者が結露に悩まされた。
木造住宅を手がける傍ら、一般住宅用の木造パネルを住宅メーカーに供給する植木社長が、木造の仮設住宅を手がける発端となったのは、95年の阪神大震災だったという。
「兵庫県から依頼され、仮設住宅用に100戸分の木製パネルを供給したところ、その断熱性が評価された。我々のパネルを使った仮設が、最後まで取り壊されずに使われたと聞いています」
その後もパネルの断面形状などを研究し、気密性能を向上させた独自の仮設住宅を開発した04年、地元・新潟が中越地震に見舞われた。震災直後から県に相談、骨組みも木造で手がけた仮設住宅8戸を柏崎市に初めて建設。さらに3年後の中越沖地震では、中越地震で使った仮設を柏崎市に持ち込むなどして13戸を整備した。
建設費は1戸当たり約350万~400万円。木材のパネルと柱を密着させて金具で固定することで暖房効率が上がり、パネルの表面が水蒸気を吸うことで結露を防いだ。コストの関係で壁面は木目がむき出しだったが、素材の温かみがむしろ喜ばれたという。
柏崎の仮設に暮らすのは多くが高齢者。「地元に戻って暮らしたい」という70代男性の要望を受け、県や市との調整の末、今月には仮設に使った建材を再利用する初めての住宅再建も実現した。
中越沖地震の後も、全国で地震や豪雨などの自然災害は後を絶たない。「元々は住宅向けのパネル工法を応用したもの。各地の工務店にノウハウを提供し、安価で住宅再建を推し進める一つのモデルにしたい」と新たな構想も描き始めている。【五十嵐和大】