スーパーの隣は警察署 ヨーカドー本牧あすオープン 万引対策や防犯で連携

11月20日8時0分配信 産経新聞

 イトーヨーカ堂の全国初となる近隣型商業施設「イトーヨーカドー本牧」が21日、横浜市中区小港町の山手警察署のすぐ隣にオープンする。ヨーカ堂から同署裏口からの容疑者らの出入りが丸見えになることから目隠しを設置するという“波紋”もあったが、山手署は同店と積極的に防犯面でコラボレーション。“究極の安全スーパー”を目指し、タッグを組むという。(今仲信博、宝田将志)

 ヨーカ堂がオープンする本牧地区は、戦後長らく米軍の居住地として使われていた。昭和57年の接収解除後は、社会保険庁所有の国有地として地域の祭りなどで使われてきたが、平成18年にチャンドラーイレブン特定目的会社が土地を取得、ヨーカ堂の進出が昨年、明らかになった。

 山手署は同店の建設のコンセプト段階から防犯面について積極的にアドバイス。管内の事件の4分の1が自転車盗難であることから、同署の提案で、駐輪場の約9分の1にあたる40台分の自転車ラックを設置。「鍵を2カ所以上かける」などの注意書きを設置することになった。万引防止については、制服警備員による店内警備の徹底や、店員が利用客に積極的に呼びかけ、万引しづらい雰囲気を作ることも署が提案した。

 最寄り駅のJR山手駅から徒歩約30分かかるため、車の利用客が多く混雑が予想される。利用客がスムーズにたどり着くように、案内標識の誘導経路なども同署交通課が念入りに考察した。

 一方、ヨーカ堂も、地域の防犯意識向上に役立ててもらおうと、近隣住民約1万世帯に配るグランドオープンのチラシ配布に合わせ、頻発している「振り込め詐欺」の注意喚起を呼びかける同署のチラシも、一緒に折り込んだ。

 ただ、問題はヨーカ堂の上層階にある駐車場から、山手署裏口が見下ろせることだ。かつて周囲は空き地だったため、山手署には都会にある警察署のように地下から車両を出すなどの設備はない。急遽、捜査やプライバシーの面を配慮し、外から見える構造になっている階段の踊り場にパネルやカーテンタイプの目隠しを付けることになった。山手署は、「プライバシーなどで新たな注意が必要になったが、店と署の双方が協力することで、地域全体の防犯向上を目指したい」と話している。

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 ■容疑者丸見えに配慮

 東京都内では、警視庁赤坂署(港区)で容疑者を外部から見えなくするための壁が新設された例がある。庁舎建て替えに伴い、昨年10月、近くの旧図書館に機能を移転。しかし、同所は敷地が狭く容疑者は移送の際、建物の外側に沿って歩くことになってしまった。そこで、高さ3メートルの鉄板の壁を約30メートルに渡って設置し、周囲から容疑者が見えないようにした。

 警視庁施設課によると、ほとんどの署は1階か地下に駐車場を設け車両を引き入れる構造になっており、外から容疑者の姿を見ることはできない。「容疑者は目立たなくしてあげるべきだし、土地が限られる都内で効率よく庁舎を建てようとすると駐車場は地下などに配置することが多くなる」(同課)

 外部の視線への配慮は、容疑者が日課として利用する庁舎内の運動場にも及ぶ。渋谷区神宮前に来年3月、原宿署の新庁舎が完成するが、隣には16階建てのマンションが建設中だ。高層階からは運動場が見下ろせるため、新庁舎の外壁は運動場が死角になる高さに設計された。

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【用語解説】イトーヨーカドー本牧

 食品館を核にベビー用品「アカチャンホンポ」、薬局「サンドラッグ」など45の専門店で構成。ターゲットは半径約2キロの約7万5000人。初年度の売り上げ目標は70億円。付近には商店街や、日用品や食品を扱う「サティ本牧」などがあり、激しい競争が予想される。しかし、ヨーカ堂は621台を収納できる大型駐車場を完備し遠方からの客も見込まれる。

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