11月25日14時50分配信 ダウ・ジョーンズ
ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル)世界鉄鋼最大手のアルセロール・ミタル(NYSE:MT)は、自動車、家電製品、機械メーカーによる需要減退を理由に、来年1月から米国で人員を16%削減する見込みであることを労働組合に通知した。これは鉄鋼業界の問題を示す新たな兆候と言える。
実施されれば、この不況下で米鉄鋼業界労働者が一度にレイオフ(一時解雇)されるケースとしては、最大規模となる見通し。だが、鉄鋼メーカーは世界的な景気減速に伴い再編を進めているため、業界全体でさらなる人員削減が予想される。
アルセロール・ミタルは「すぐにレイオフを実施するわけでない」としながらも、米インディアナ州ゲーリーの近郊にあるバーンズハーバー工場の従業員2444人を対象に、期間を定めないレイオフを実施する予定であると、全米鉄鋼労働組合に通告した。同社は米国で1万5543人の時間給労働者を雇用している。
「今後実施される可能性のある減員は、われわれが直面している異常な経済環境下では必然的な結果である」と、広報担当者のウィリアム・スティアズ氏は語った。
鉄鋼需要の後退を受けて、同社は少なくとも年末まで、北米で40%の減産を余儀なくされている。アナリストらは、需要家が自身の抱える在庫を一掃し、自動車と家電製品の生産を縮小するとして、2009年半ばまで鉄鋼需要は回復しないと予想している。
USスチール(NYSE:X)やAKスチール・ホールディング(NYSE:AKS)など、ほかの鉄鋼メーカーも先ごろ、北米で減産を実施すると発表した。
鉄鋼メーカーは、熱延鋼板など指標となる鉄鋼製品の価格がコストを下回らないよう、供給と需要を一致させることに追われている。米国での熱延鋼板の価格は、今夏に1トン当たり1000ドル近くに達したが、現在は700ドル近辺で推移している。
ワールド・スチール・ダイナミクスの鉄鋼アナリスト、ピーター・マーカス氏は、「熱延鋼板の価格が650ドル近辺を維持しなければ、大半の鉄鋼メーカーは黒字を確保できない」と指摘した。
バーンハーバー工場は1-3月にはフル稼働していたが、今は減産を実施しており、状況が一変している。