12月9日8時4分配信 産経新聞
■巨大なセット、各地でロケ
名作「黒部の太陽」が、フジテレビ開局50周年記念特別企画として40年ぶりに制作されている。三船敏郎、石原裕次郎主演による昭和43年公開の映画、翌年放送された日本テレビ系連続ドラマ以降、その壮大なスケールと膨大な制作費のため映像化は不可能とされてきたが、構想3年、50周年の大事業として実現。各地でのロケを経て、現在日活撮影所(東京都調布市)で撮影が進められている。
高度成長期、深刻なエネルギー不足に悩まされていた日本を救うため、7年の歳月をかけて昭和38年に完成した黒部川第四発電所建設。今回のドラマは、木本正次原作を忠実に再現し、黒四建設の中でも最大の難工事といわれた大町トンネル掘削工事に焦点を当てた。撮影所の12スタジオに作られたトンネルのセットは、この道50年の美術プロデューサー、根本研二さんの自信作。「太さや感覚、計算違いの出来事は何もなかった。重量感がよく出ている」と胸を張る。
トンネルは幅6メートル、高さ約5メートル、長さ約28メートル。「最初は100メートルくらいは、と思った。映画は当時200メートルのセットを作ったからね。いまはCGが発達しているからうまく見せられるが、それよりも課題は枠組みの素材だった。
「最初は鉄骨を使おうとしたが、モク(木材)で厚みをどれだけ出せるか、いかに鉄に見せられるかに挑んだ」と根本さん。水が噴き出す仕掛け作りのため、ブルドーザーで土のステージに水槽を作り、その上に鉄板を敷いてから土を盛るなど手間をかけ、3カ月がかりで完成させた。
「トンネル内は暗いので、ジャンボ(足場)にメッシュ素材を取り入れ、撮ったときに天井が明るく抜ける感じの効果を入れた」と出来栄えに満足そうだった。
作品は、工事の最前線で奮闘する熊谷組の親方(香取慎吾)と関西電力の建設事務所次長(小林薫)の男の友情を縦軸に、工事にかかわった人たち、それを陰から支えた人たちの人間ドラマを展開する。
10月のクランクインから、今回のスタジオ撮影や、栃木県内に作った「東京ドーム1個分」という大規模なオープンセットなど、大道具だけで3億円はかかっているという。
香取は「ほこりと密閉感。こういう状況で24時間掘り続けていたなんて信じられない」と驚く。「パンドラ」などの秀作を手がけてきた演出の河毛俊作は、香取に「ここは芝居じゃない。工事現場なんだ」と言い続けたという。
鈴木吉弘プロデューサーは「戦後の復興をかけ、命をかけた男たちの物語。日本の未来のため、国のために働く、そういう姿が忘れられている時代。大事に描いていきたい部分です」と話している。来春放送。