350トン本堂、解体せずにそろり 岩倉・正起寺

岩倉市大地新町の正起(しょうき)寺(下間(しもつま)修住職)で、明治時代に建てられた本堂の「曳(ひ)き家」が進められている。免震改修工事の一環で、重さ350トンの建物全体を解体せずに20メートル移動させる作業だ。28日は檀(だん)信徒や近隣の寺関係者らが、本堂がそろりと動いていく様子を見守った。

 寺は1891(明治14)年に濃尾地震の影響で倒壊し、1900年に再建された。木造平屋520平方メートルの本堂は老朽化で柱が傾き、地震があれば崩壊の危険もあり、昨年12月から工事を開始した。

 本堂が建つ位置の地盤を補強した上で、基礎に免震装置を取り付ける必要があり、今年3月に最初の曳き家を実施。東に20メートル離れた山門の手前まで移動させており、本堂を元の位置に戻す作業が27日から始まった。

 鉄板に載せた本堂をワイヤで引き、下に敷いた鋼管を転がして移動する工法。作業員30人がかりで、1時間に1~2メートル動かす。元の位置に戻すためには3日かかるといい、作業は29日まで続けられる。「曳き家は昔はよくあったが、今はあまり見られない」と、施工者の魚津社寺工務店(名古屋市中川区)の担当者。檀信徒たちは「濃尾地震が起きた10月28日に、免震のための作業が行われるのは感慨深い」と話していた。

 今後は本堂の耐震補強をして、工事は来年2月に終了予定。同5月1日には落慶法要を開く。

 (出口有紀)

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