7、8日、久留米市中心街に18万人(主催者発表)を呼び込んだ「第1回九州B‐1グランプリ」は、地元「久留米やきとり」が初代王者に輝いた。「久留米ラーメン」も3位入賞と好成績。投じられた1票1票はご当地グルメを通じた街おこしへの期待感の裏返し。2日間の熱気を次につなげる関係者たちの一歩を市民は待ち望んでいる。
■市民においしさと楽しみ
焼き鳥店主たちの挑戦は郊外に大型商業施設が進出した2003年にさかのぼる。「人口比の焼き鳥店数が日本一(当時)の焼き鳥で中心街ににぎわいを生み続けていこう」と毎年、焼き鳥フェスタを開いてきた。
「ようやく久留米の焼き鳥が自他共に認められた」と店舗数調査をしたタウン誌「くるめすたいる」発行人筒井博文さん(52)。ただ「これで終わったら意味がない」。
事業費2200万円の九州B‐1は国・市の補助金1400万円がつぎ込まれるが、もちろん業界支援のためではない。
B‐1トロフィーを受け取った焼き鳥店主、原田憲一郎さん(38)は「受賞をステップに街に恩返しできる取り組みをしないと」。今回、鶏肉を提供した市内の養鶏業者、古賀光幸さん(62)も「より内外にPRできる焼き鳥用のおいしい地鶏をつくる」と意気込む。
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中心商店街で催された九州B‐1の関連イベントに新名物のお好み焼き(愛称・ダゴ)で参戦したありあけ新世高(大牟田市)の生徒たち。「街を元気にするため、一人でも多くに私たちがダゴの魅力を発信する」と、熱くなった鉄板の前で文字通り汗を流した。
7日からはB級グルメを提供する久留米市内90店でスタンプラリー企画「食の八十八カ所巡礼の旅」も始動。同校生徒たちのようなご当地食を愛する市民をつくるきっかけづくりを目指すが、店側が待っているだけではただの催しに終わる。
9日昼、市中心部のうどん店では「きのうはすごい人だったね」と話す常連客たちに、「今度は巡礼を楽しんで。これを持って他の店も回って」とラリーの台紙を渡す店主夫人の姿があった。「市民みんなに台紙を持たせるつもりやけんね」
この日午後、早くも小郡市の男性(68)は10店を制覇し、「90店をめぐる」と宣言したという。
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現在、久留米市や久留米商工会議所が掲げる「B級グルメの聖地(まち)」。イベント時だけ盛り上がるのではなく、日常的に久留米が食の街と認知され、観光客を呼び込んで初めて聖地と胸を張れる。
そのためには焼き鳥、ラーメン、筑後うどんなどの関係者が、店や業界の枠を超えて連携し、自ら汗をかき、市民においしさとともに、楽しみを提供していく以外に近道はないのだろう。
=2009/11/10付 西日本新聞朝刊=