落橋防ぐ鋼鉄ケーブル…神鋼子会社 2500か所工事

阪神大震災で高速道路などで道路を支える橋げたの落下(落橋)事故が多発した教訓から、高速道路などの接続部分や、道路と橋脚の間を超高強度の鋼鉄製ケーブルで結ぶ工法が広がってきた。橋脚の耐震補強と同時に進められており、道路寸断などの最悪の事態を防ぐ“生命線”となっている。

(平井久之)

「落橋防止ケーブル」を手がけているのは、神戸製鋼所の鋼線子会社、神鋼鋼線工業(兵庫県尼崎市)だ。1995年の震災を機に開発を始めて翌96年に発売、2008年までに、阪神高速道路神戸、湾岸線など全国の2500か所以上の工事で実績を重ねている。

 このケーブルは、大型橋の補強材などに使われる、「現存する鋼材で引っ張り強度が最強」という鋼鉄線を束ねてある。最大で10本束ねたケーブル(直径14センチ)は、1本で584トンの重量に耐えられるという。

 震災前は橋げたの接続部を鉄板などで固定する方式が一般的だったが、遊びがないため、想定以上の衝撃だった震災では耐えられなかった。このため、衝撃を吸収し、ねじれにも強いケーブル方式が見直された。

 同社も震災時に液状化現象で工業用水が止まり、生産ラインが停止するなど被害を受けた。南敏和取締役は「地元企業として、復興の役に立てればと開発を急いだ。被害を最小限にとどめる最後の砦(とりで)となっているのは誇らしい」と話す。

 阪神大震災では、阪神高速神戸線で高架橋が倒壊、5か所で落橋事故が起こり、全線開通まで約20か月を要した。国土交通省は阪神大震災と同規模の地震でも壊滅的な被害を受けない耐震補強を05~07年度に集中実施し、緊急輸送道路に指定された全国の高速道路などで補強が必要な約5万の橋脚のうち、約3万5000で対策を終えている。

(2010年1月15日 読売新聞)

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