味真野茶が復活、市民手もみ再現 記者も密着、手作業の醍醐味を実感 越前市

茶の産地として栄えた福井県越前市南東部の味真野地区。製茶は一帯の伝統産業として江戸時代から受け継がれたが、人手不足のため戦後まもなく衰退した。地区内には放置された茶畑が数多く残る。「製茶を復活させよう」と住民が立ち上がり今月23日、昔ながらの茶摘み、手もみ作業で製茶が再現された。地区にとっては歴史的な出来事になった1日に密着した。

(武生支社・宮崎翔央)

 ■新芽は柔らかかった

 午前8時半、同市五分市町の城福寺。製茶復興を呼び掛けた実行委メンバーと市民ら計約30人が集まった。地区内には、剪定(せんてい)などの手入れが続けられたおかげで、茶摘みを再開できる茶畑が何カ所も残る。

 腰丈ほどの茶の木が列になって並ぶ。参加者は列の間に入って腰を曲げ、茶摘みを始めた。茶色い枝の先端を見ると鮮やかな緑色の部分がある。新芽だ。そこから生えている3、4枚の茶葉を手で慎重に摘んでいく。

 ポキッポキッと気持ちよい音を鳴らして簡単に採れる。摘みたての茶葉は柔らかい。根元の葉はツバキのように固く、違いは明らかだった。「子どものころ、新芽を摘んではそのまま食べて遊んだよ」との声に、恐る恐る口に運んだ。思ったほど苦くない。濃いお茶を飲んだ後のように、うま味がじわっと広がった。

 ■変わっていく香り

 1時間で約5キロを収穫。場所を同市余川町の味真野苑(えん)に移し、古民家内で手もみ作業を開始。

 収穫した茶葉は蒸した後、水分を飛ばしながらもみほぐすことで、こより状の乾燥茶になる。今では機械化されてしまったが、昭和初期ごろまでは手もみだった。

 今回は実行委が前日に収穫、蒸す工程まで済ませた茶葉を使った。木炭で熱した鉄板に木の板を重ね、その上で茶葉をもんでいく。両手を合わせるように、力強く葉をこする。最初は青臭かったが、熱せられたことで香ばしくなり、湿った感触が次第に乾燥していくのが分かった。

 指導してくれた製茶経験者の野川勝さん(81)=同市味真野町=によると、「触覚や嗅覚(きゅうかく)で変化を見極め、最適な調整ができるのが手もみの醍醐味(だいごみ)。機械では決してできないが、相当の訓練が必要になる」。参加者のほとんどが初体験だったが、野川さんらの話を聞きながら自分たちなりに「見極め」を楽しんだ。

 ■伝統の茶を後世に

 茶もみ最中に実行委らが民謡「味真野茶もみ唄(うた)」を披露し、作業は和やかな雰囲気で進められた。もみ終わった茶は参加者全員に配布。実行委が事前にもんでおいた味真野茶の試飲も行われ、結婚前まで味真野地区に住んでいたという高齢女性たちは「子どものころ飲んだ味を思い出した。苦みの中にも甘さがあり、鼻に抜けるような良い香り。懐かしさでいっぱい」と喜んでいた。

 実行委の福岡忠則委員長(63)=同市宮谷町=は「味真野茶が復活した記念すべき1日になった」と笑顔をみせ、来年度以降も茶摘み、手もみ体験を続けると意欲を燃やしていた。

 記者も茶摘み、手もみとも初めての経験だったが「野菜を食べるのと同じように植物の生命力をもらっている」と実感することができた。今回を契機に味真野茶の伝統が見直され、後世に伝えようという機運が盛り上がっていくことに期待したい。

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