釜山射撃場火災 徹底した安全対策を望む

出入り口は1カ所、室内は窓が一つあるだけで密室に近い。弾薬庫も別にある。こんな場所で、もし火災が起きれば…と考えただけでも恐ろしくなる。

 爆発音とともに燃え広がった炎は一瞬にして室内を包んだ。韓国・釜山市の室内射撃場で発生した火災は、長崎県雲仙市の中学の同窓生グループなど10人が死亡する大惨事となった。福岡県内の会社員も巻き込まれたとみられるという。

 火の回りの早さを物語るように、亡くなった10人のうち7人が室内奥に取り残され、3人は出入り口付近で見つかっている。逃げる間もなく犠牲になった無念の思いを考えると、言葉もない。

 現場となった射撃場は、飲食店などが密集する繁華街の5階建て雑居ビルの2階にあった。誰でも実弾を撃てる射撃場がビルの一室にあること自体が、日本では想像さえできないことだ。

 韓国では一般人の銃所持は日本と同じく禁じられているが、射撃場の営業は警察当局の許可を受ければ比較的簡単にできる。野外射撃場は住宅街から200メートル以上離すよう定められる一方で、室内射撃場の規定はない。内部も射撃スペースを鉄板などで遮断し、防音効果を上げるため密閉状態にするなど、防弾・防音対策に重点を置いているのが実態だ。

 防火、避難体制はどうか。スプリンクラー設置は「射撃場は数が少ない」(地元の消防署)ことを理由に法律では義務づけられておらず、自動火災探知設備と誘導灯、消火器があればいい。この射撃場にもスプリンクラーはなかった。

 密閉状態で防音効果を高めるため非常口は設けなくてもいいという。現場の射撃場は今月6日に消防などが検査したが、現状の規定ではとくに問題はなかった。出火原因は警察などが捜査中だが、こうした防火、避難体制の不備が被害を拡大させたことは否めないだろう。

 韓国では2006年4月にも、ソウル市内の室内射撃場で火災が発生して、従業員1人が死亡、日本人観光客ら7人が負傷している。結果的には、この時の教訓が生かされておらず、残念でならない。これでは、安全対策を置き去りにしたと言われても致し方あるまい。

 福岡市と釜山市が高速船で約3時間で結ばれるなど、釜山市は短時間で手軽な海外旅行地として人気が高い。九州運輸局によると、08年度に九州・山口と釜山間の船舶を利用した日本人は35万6千人(前年度比22%増)で、年々増加傾向にある。それだけに、今回の火災が日本人旅行客に与える影響も少なくない。

 折しも今年は、福岡市と釜山市の行政交流協定締結20年という記念すべき年だ。18日に東京で両市が合同で行う予定だった観光PR事業が延期されるなど、火災の影響も出始めている。「韓流ブーム」などで芽生えた日韓の市民交流に水を差さぬよう、韓国当局には徹底した原因究明と再発防止策を求めたい。

=2009/11/17付 西日本新聞朝刊=

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