伝統の檜皮葺き、鉄板で修復…財政難で名刹危機

都道府県の財政悪化によって、全国で予算の削減が進む国宝・重要文化財の修復費。修理のメドが立たずに、鉄板や鉄柱で応急措置が施された文化財もある。

 府県の担当者は「ほかの事業も予算を削減しており、やむを得ない」と説明するが、寺院などからは「貴重な文化遺産が危機にさらされる」と予算確保を求める声が上がる。

 ムササビに穴を開けられた御影堂(重文)の檜皮葺(ひわだぶ)きの屋根を鉄板で覆う大津市の名刹(めいさつ)・石山寺。瓦屋根の重みで傾いた蓮如堂(同)を鉄柱で支えて倒壊を防いでいるが、滋賀県の補助が出るメドは立たない。鷲尾遍隆座主(63)は「もっと傷みが激しい寺社があるので、催促はできない」と語る。

 檜皮葺きは30~40年で葺き替える必要があるが、葺き替えから40年を超えた国宝・重文の建造物が同県内だけで10棟を数えるという。県教委文化財保護課は「予算を確保できず、順番待ちをしてもらっている」と内情を明かす。

 一方、南北朝時代に行宮(天皇の仮宮)となった大阪府河内長野市の金剛寺は2008年度から、約300年ぶりに金堂(重文)などの本格的な修理を始めた。総事業費は9年間で15億円で、国の補助率は55%。府からの補助がないため、同市と寺が22・5%ずつを負担することになる。

 堀智範座主(90)は「傷みがひどくなるので、先延ばしできない。寺の財産を処分せざるを得ないかもしれない」と心配する。尾谷雅彦・同市教委社会教育課長も「どれだけ負担できるか」と不安をにじませる。

 先月完成した奈良市の唐招提寺の金堂修理では、奈良県が事業の途中で補助率を5%から3%に下げた。担当者は「財政当局からは補助予算を減らせと言われるが、これ以上減ると、修理事業に支障が出かねない」と話す。京都府でも補助予算は減っており、府教委文化財保護課は「何とか現行予算を守りたい」とする。

 文化財保存修復学会長の三輪嘉六・九州国立博物館長は「文化財には修理すべきタイミングがあり、遅れれば修理が不可能になる。文化財の継承を考慮すれば、修理のための新たな予算化の仕組みが必要だ」と指摘する。

(2009年12月6日14時27分 読売新聞)

たこ焼き大使、ドイツへ 11日総領事館パーティーで振る舞う

大阪グルメ「たこ焼き」が11日、ドイツの在フランクフルト日本総領事館で開かれるパーティーで、日本を代表する料理の一つとして来賓者らに振る舞われる。高級なすしや天ぷらだけでなく、庶民的なイメージがあるたこ焼きを通じて、日本に親しんでほしいと総領事の重枝豊英さんが企画した。たこ焼きを焼くために手弁当でドイツに渡るのは、大阪のたこ焼きチェーンの経営者ら。「責任は重いが、世界に広めるチャンスにしたい」と準備を進めている。

 パーティーは天皇陛下の誕生日を前に「ナショナルデー」として、総領事館側がヘッセン州政府や経済界の要人を招いて毎年開催。今年は、ご即位20年のお祝いも兼ねていて、約400人を招待するという。

 ドイツでは近年、中国への関心が高まり、同じアジアの日本の存在感が薄れ気味。日本全体のアピールのほか、多様な地域性もPRしようと、「大阪のたこ焼き」をパーティーで披露することにした。

 総領事館の大西知恵副領事は「高級なイメージがあるすしや天ぷらでは伝えられない、元気で親しみやすいイメージをたこ焼きを通じて知ってもらえたら」と話す。

 当初は、領事館職員が手作りする計画だったが、400人分ものたこ焼きを素人が手早く焼くの難しいことから、重枝さんが、大阪の知人を通じてボランティアを募った。

 渡航費や材料の運送費も、すべて手弁当だが、たこ焼きチェーン「道頓堀くくる」を展開する白ハト食品工業(本社・守口市)の永尾俊一専務(46)が「やりましょう」と手を挙げた。

 永尾さんは、これを機会に、世界中にたこ焼きを広めたいと、食文化研究家で日本コナモン協会会長の熊谷真菜さん(48)や、イベントプロデューサーの上谷信幸さん(37)にも声をかけて、「世界タコヤキ委員会(略称・WTC)」を結成。

 WTCでは、パーティーに向け、タコが苦手な人のために、代わりにドイツソーセージを入れた“ご当地たこ焼き”を試作するなどして準備を進めている。

 当日は、鉄板を会場に持ち込み同社のベテラン職人2人が、菜ばしで丸く焼き上げる技を披露するほか、大阪の映像を流したり、大阪には家庭用のたこ焼き器が普及していることなどを紹介する計画だ。

 スピーチを担当する熊谷さんは「みんなでワイワイと焼いたり、同じ皿のものをつついたりする楽しさこそたこ焼きの魅力。大阪のたこ焼き文化を伝えたい」。永尾さんは「たこ焼きが日本全体のイメージにかかわってくると思うと責任は思い。全力で成功させたい」と意気込んでいる。

86%がプラスチック類 羽咋・千里浜で漂着物調査

県などによる今年度3回目の海辺の漂着物調査は2日、羽咋市千里浜海岸で行われ、県や同市の職員ら13人が3区画で人工の漂着物を拾った。収集物の数量比率はプラスチック類が約86%を占めた。
 10メートル四方の3区画で材質8種類に分けた結果、計360個のうち、プラスチック類が309個(約85・8%)、次いで発泡スチレン(5・6%)となった。6キロ以上の鉄板1枚も見つかった。

 調査は1996(平成8)年度から日本海と黄海沿岸の日本やロシア、韓国、中国の海岸で行われ、千里浜海岸は初回から定点観測地となっている。今年度4回の調査結果は財団法人環日本海環境協力センター(富山市)に提供される。

仙台市職員ら書類送検へ

業過致死容疑仮設橋で市民転倒死
 仙台市太白区の仮設橋で昨年11月、男性(当時37歳)が乗った自転車のタイヤが溝にはまり転倒し、死亡した事故で、仙台南署は、工事を発注した市の担当者3人ら計4人を業務上過失致死の疑いで仙台地検に書類送検する方針を固めた。県警への取材でわかった。1日にも書類送検する。

 書類送検されるのは、いずれも当時の市建設局道路課長と同課係長、主任と、工事を請け負った建設会社「河北建設」(同市太白区)の現場責任者。課長は既に退職した。

 市によると、男性は2008年11月15日午後5時頃、自転車に乗り、太白区土手内の金洗沢川にかかる仮設橋を渡った際、橋の上に敷かれた4枚の鉄板(1枚幅2メートル、長さ18メートル)の間にできた幅約2・6センチの溝にタイヤがはまり、自転車ごと転倒。男性は頭を強く打って意識不明の重体となり、8日後、収容先の病院で死亡した。

 捜査関係者によると、市と建設会社とも、鉄板のすき間に気づかないまま作業を続け、安全対策をとっておらず、現場の安全管理に問題があったと判断した。

 この事故を巡っては、同市は今年10月23日、男性の遺族に損害賠償約5500万円を支払い、和解した。

 市は事故後、発注している橋や市道工事のうち、鉄板を敷いて作業を行っている26か所を調査。12か所で自転車のタイヤがはまったり、歩行者がつまずいたりする危険性のある鉄板のすき間が見つかり、すき間にアスファルトを流して平らにするなどした。

(2009年12月1日 読売新聞)