■市、移設「できぬ」
糸魚川市のシンボルの一つ、JR糸魚川駅構内の「レンガ車庫」の解体が決定的になった。建物をそのまま駅南側の駐輪場予定地に移動させる「曳家(ひきや)」案を提示し全面保存を求めていた市民団体に対し、市は10日夕、北陸新幹線の建設工事に支障が出て実施できないとする結論を示した。今後は、部分切り取り保存に向けて双方で協議し、JR西日本に要請することになった。
(遠藤雄二)
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1912年完成のレンガ車庫は貴重な鉄道施設として親しまれているが、建設中の北陸新幹線にかかる。保存を求めるレンガ車庫基金実行委員会(天井貞代表)は9月、約700トンあるレンガ車庫を鉄板に載せて、110メートル移動させる案を市に示した。
移動場所は、新幹線開業に伴って整備される南口広場脇の駐輪場予定地。8月に認定された世界ジオパークの発信拠点として展示や土産品販売、イベント会場などに使う計画を提案していた。
米田徹市長は10日、天井代表らと会談し、「曳家案は実現できない」と回答した。
市新幹線推進課によると、北陸新幹線を建設する鉄道・運輸機構と協議した結果、車庫の移動にかかる数カ月間、新幹線の工事車両が通行できなくなり工事の遅れが避けられない。さらに実行委が見積もった3億4千万円を上回る費用がかかり、財政的に極めて困難だという。
市は、部材を切り取り、新しい駅舎の一部や駅周辺に生かす方向で、レンガ車庫を所有するJR西日本と協議するとしている。
会談に同席した「糸魚川レンガ車庫保存・活用研究会」の後藤幸洋会長は「残念だが、市の方針を受け入れざるを得ない。今後は、できるだけその姿が残り、空間として使えるような形での保存を実現したい」と話す。
ただ、どの部分をどれだけ残せるかは未知数だ。壁の一部やモニュメントにとどまる可能性もある。保存を前提に切り取り、保管するには相当な費用がかかるからだ。
新幹線建設に伴うレンガ車庫の解体は来年3月からの予定で、部分保存するには2月までにJR西日本と合意する必要がある。JR西日本金沢支社広報は「できるだけの協力はしたい」としている。